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PAACニュース163号:大腿骨滑車形成不全のある16歳の運動選手の膝蓋骨脱臼
2018/10/31
John C.S.DC、Daniel W.Haun,DC、Adam P.Morrell,DC、Norman W.Kettner,DC 著
訳:栗原輝久
概観
目的:今回の症例報告では、大腿骨滑車形成不全(femoral trochlear dysplasia:FTD)と亜急性の膝蓋骨脱臼のある患者の診断と保存的管理について議論する。大腿骨滑車形成不全には滑車切痕が異常に浅いという特徴がある。大腿骨滑車形成不全では、浅い滑車切痕からの膝蓋骨の離脱が一般的で、反復性の膝蓋骨脱臼とその結果としての早期の骨関節炎への危険因子となる傾向がある。反復性の膝蓋骨脱臼や膝蓋大腿関節の軟骨と支持構造の損傷を予防するには正確な診断が必要である。
臨床的特徴:16歳の男子が右膝蓋骨周辺の疼痛、斑状出血、腫脹を訴えて来院したが、これらの症状は、自らが認めている脱臼事故の約1ヶ月後からのものだった。核磁気共鳴画像や超音波検査などの臨床画像所見から、以前には診断未確定だった大腿骨滑車形成不全による膝蓋骨脱臼の証拠が明らかとなった。
治療とその結果:現地の病院での膝の浸出液の排出の後、この患者は、特注の膝蓋骨誘導装具、固定装具による固定、様々な筋の安定、強化エクササイズから成るカイロプラクティック治療を受けた。治療から6週間後、腫脹と斑状出血は解消した。膝の可動域は完全で無痛だった。膝蓋骨の過可動性の間隔に変化はみられなかったが、この患者は、右膝の強度と安定性の改善を報告した。
結論:今回の症例は、膝蓋骨脱臼と大腿骨滑車形成不全のある若年の運動選手と保存的管理におる良好な反応を明らかにしている。内在する大腿骨滑車形成不全を外科的に修復する事なく、保存的固定と強化手順によって良好な結果が得られた。大腿骨滑車形成不全の保存的管理についての報告例が今まで無かった事が、今回の症例を独特なものとしている。しかし現時点では、保存的管理の長期に亘る結果は不明で、治療手順を評価するには更なる研究が必要である。
(J Manipulative Physiol Ther 2009;32:687-694)
鍵となる言葉:膝蓋骨脱臼:カイロプラクティック:超音波検査:核磁気共鳴画像
図1.膝蓋骨の接写レントゲン像、外傷を負った日に撮影 図2.大腿骨遠位レベルでの右膝の断層T2強調MRI
されたもの、内側膝蓋大腿靭帯(medial patellafomoral 画像、広範な高信号の浸出液が見られる。内側膝蓋
ligament:MFLP)の付着部の剥離が見られる。 内側膝蓋大腿靭帯(MFLP)の中央部に異常は見ら
れない(黒い矢印)。膝蓋骨への付着部では、肥厚
と信号強度の増強(白い矢印)が見られる。MPFL
の大腿骨への付着点(彎曲した白い矢印)では、隣
接する軟部組織内に高信号領域が見られる。これら
の所見は、MPFLの損傷を意味している。
図3.右膝の冠状断の短タウ粒子反転回復?MRI画像、 図4.大腿骨滑車レベルでの断層T2強調MRI画像、滑車の
脱臼した膝蓋骨の影響のために大腿骨外側顆の骨髄 低信号の皮膚(黒い矢印)が描写されている。大腿骨滑車
内(矢印)に高信号の浮腫が見られる。高信号とな の内側面の角度は浅く、滑車は突出している。滑車の内
る広範な浸出液が大腿骨遠位部と脛骨近位部周辺に 側面は外側よりも非常に小さい。これらの所見は、大腿骨
視認できる。 滑車形成不全と一致する。脱臼した膝蓋骨の影響により、
大腿骨外側顆の骨髄内には高信号の浮腫(白い矢印)が
存在している。広範な高信号の浸出液が視認できる。
図5.大腿骨滑車上部の断層T2強調MRI画像、膝蓋骨 図6.顆間切痕部での矢状断プロトン密度強調画像、
内側面の軟骨内に高信号が見られる(黒い矢印)、 大腿骨滑車の異常な突出(矢じり印)が見られる。
これは脱臼の際の大腿骨外側顆の影響によるもので 大腿骨遠位部にある低信号の前部皮質は、正常なら
ある。滑膜襞を表す線形の低信号構造が広範な高信 ば大腿骨滑車の床部の低信号の皮質へと滑らかに
号の浸出液内に見られる(矢じり印:▶) 移行する。しかしこの患者では、移行区間へ向けて
棚状の突出が存在している、これは、大腿骨滑車
形成不全と一致している。
図7.膝内側の断層超音波画像、前後面の線形エコー 図8.膝蓋骨前上部の長軸方向延長の超音波画像、後部の
像(彎曲した黒い矢印)が見られる。小さな線形エ 反響陰影を伴う膝蓋骨の正常な線形エコー像(彎曲した
コー像がMPFLの付着部に存在している(白い矢印), 黒い矢印)、大腿四頭筋の正常な過剰反響性の線維状
これは、剥離骨折を示している(白い矢印)。 パターン(白い矢印)、外側広筋の正常な過小反響性の
MPFLは、膝蓋骨の付着部で肥厚している(白い矢印) 液体蓄積(白いダイヤモンド形)が伸展メカニズムの深
。大腿骨の皮質(太い白い矢印)の前方に低エコー 部に見られる。これは、浸出液を示している。薄い線形
の浸出液(白いダイヤモンド形)が見られる。 の過剰反響性の線(波打った白い矢印)は、滑膜襞を表
MPFLの表面に低エコーの内側広筋(白い星印)が している。大腿骨遠位部の音波発生性の皮質(白い矢印)
視認できる。 が浸出液の深部に見られる。
(中略)
臨床的摘要
●大腿骨滑車形成不全は、浅い大腿骨滑車という特徴があり、この切痕から膝蓋骨が脱臼し易いものである。
●内側広筋斜頭と内側膝蓋大腿靭帯は、膝の主要な安定装置である。
●膝の安定装置を評価する際には、核磁気共鳴画像と超音波検査が有効である。
●大腿骨滑車形成不全は、反復性の膝蓋骨脱臼や早期の骨関節炎の発症との関連性が強いので、早期の診断と治療
が非常に重要である。
●膝蓋骨脱臼は、大腿骨滑車形成不全(FTD)の一般的合併症で、膝の内側の安定装置を損傷させる事が多い。膝
のこれらの構造を描写するには、核磁気共鳴画像と超音波検査が有効である。FTDは、膝蓋骨脱臼との関連性が
強いので、時機を得た管理が重要である。 (以下省略)
訳:栗原輝久
概観
目的:今回の症例報告では、大腿骨滑車形成不全(femoral trochlear dysplasia:FTD)と亜急性の膝蓋骨脱臼のある患者の診断と保存的管理について議論する。大腿骨滑車形成不全には滑車切痕が異常に浅いという特徴がある。大腿骨滑車形成不全では、浅い滑車切痕からの膝蓋骨の離脱が一般的で、反復性の膝蓋骨脱臼とその結果としての早期の骨関節炎への危険因子となる傾向がある。反復性の膝蓋骨脱臼や膝蓋大腿関節の軟骨と支持構造の損傷を予防するには正確な診断が必要である。
臨床的特徴:16歳の男子が右膝蓋骨周辺の疼痛、斑状出血、腫脹を訴えて来院したが、これらの症状は、自らが認めている脱臼事故の約1ヶ月後からのものだった。核磁気共鳴画像や超音波検査などの臨床画像所見から、以前には診断未確定だった大腿骨滑車形成不全による膝蓋骨脱臼の証拠が明らかとなった。
治療とその結果:現地の病院での膝の浸出液の排出の後、この患者は、特注の膝蓋骨誘導装具、固定装具による固定、様々な筋の安定、強化エクササイズから成るカイロプラクティック治療を受けた。治療から6週間後、腫脹と斑状出血は解消した。膝の可動域は完全で無痛だった。膝蓋骨の過可動性の間隔に変化はみられなかったが、この患者は、右膝の強度と安定性の改善を報告した。
結論:今回の症例は、膝蓋骨脱臼と大腿骨滑車形成不全のある若年の運動選手と保存的管理におる良好な反応を明らかにしている。内在する大腿骨滑車形成不全を外科的に修復する事なく、保存的固定と強化手順によって良好な結果が得られた。大腿骨滑車形成不全の保存的管理についての報告例が今まで無かった事が、今回の症例を独特なものとしている。しかし現時点では、保存的管理の長期に亘る結果は不明で、治療手順を評価するには更なる研究が必要である。
(J Manipulative Physiol Ther 2009;32:687-694)
鍵となる言葉:膝蓋骨脱臼:カイロプラクティック:超音波検査:核磁気共鳴画像
図1.膝蓋骨の接写レントゲン像、外傷を負った日に撮影 図2.大腿骨遠位レベルでの右膝の断層T2強調MRI
されたもの、内側膝蓋大腿靭帯(medial patellafomoral 画像、広範な高信号の浸出液が見られる。内側膝蓋
ligament:MFLP)の付着部の剥離が見られる。 内側膝蓋大腿靭帯(MFLP)の中央部に異常は見ら
れない(黒い矢印)。膝蓋骨への付着部では、肥厚
と信号強度の増強(白い矢印)が見られる。MPFL
の大腿骨への付着点(彎曲した白い矢印)では、隣
接する軟部組織内に高信号領域が見られる。これら
の所見は、MPFLの損傷を意味している。
図3.右膝の冠状断の短タウ粒子反転回復?MRI画像、 図4.大腿骨滑車レベルでの断層T2強調MRI画像、滑車の
脱臼した膝蓋骨の影響のために大腿骨外側顆の骨髄 低信号の皮膚(黒い矢印)が描写されている。大腿骨滑車
内(矢印)に高信号の浮腫が見られる。高信号とな の内側面の角度は浅く、滑車は突出している。滑車の内
る広範な浸出液が大腿骨遠位部と脛骨近位部周辺に 側面は外側よりも非常に小さい。これらの所見は、大腿骨
視認できる。 滑車形成不全と一致する。脱臼した膝蓋骨の影響により、
大腿骨外側顆の骨髄内には高信号の浮腫(白い矢印)が
存在している。広範な高信号の浸出液が視認できる。
図5.大腿骨滑車上部の断層T2強調MRI画像、膝蓋骨 図6.顆間切痕部での矢状断プロトン密度強調画像、
内側面の軟骨内に高信号が見られる(黒い矢印)、 大腿骨滑車の異常な突出(矢じり印)が見られる。
これは脱臼の際の大腿骨外側顆の影響によるもので 大腿骨遠位部にある低信号の前部皮質は、正常なら
ある。滑膜襞を表す線形の低信号構造が広範な高信 ば大腿骨滑車の床部の低信号の皮質へと滑らかに
号の浸出液内に見られる(矢じり印:▶) 移行する。しかしこの患者では、移行区間へ向けて
棚状の突出が存在している、これは、大腿骨滑車
形成不全と一致している。
図7.膝内側の断層超音波画像、前後面の線形エコー 図8.膝蓋骨前上部の長軸方向延長の超音波画像、後部の
像(彎曲した黒い矢印)が見られる。小さな線形エ 反響陰影を伴う膝蓋骨の正常な線形エコー像(彎曲した
コー像がMPFLの付着部に存在している(白い矢印), 黒い矢印)、大腿四頭筋の正常な過剰反響性の線維状
これは、剥離骨折を示している(白い矢印)。 パターン(白い矢印)、外側広筋の正常な過小反響性の
MPFLは、膝蓋骨の付着部で肥厚している(白い矢印) 液体蓄積(白いダイヤモンド形)が伸展メカニズムの深
。大腿骨の皮質(太い白い矢印)の前方に低エコー 部に見られる。これは、浸出液を示している。薄い線形
の浸出液(白いダイヤモンド形)が見られる。 の過剰反響性の線(波打った白い矢印)は、滑膜襞を表
MPFLの表面に低エコーの内側広筋(白い星印)が している。大腿骨遠位部の音波発生性の皮質(白い矢印)
視認できる。 が浸出液の深部に見られる。
(中略)
臨床的摘要
●大腿骨滑車形成不全は、浅い大腿骨滑車という特徴があり、この切痕から膝蓋骨が脱臼し易いものである。
●内側広筋斜頭と内側膝蓋大腿靭帯は、膝の主要な安定装置である。
●膝の安定装置を評価する際には、核磁気共鳴画像と超音波検査が有効である。
●大腿骨滑車形成不全は、反復性の膝蓋骨脱臼や早期の骨関節炎の発症との関連性が強いので、早期の診断と治療
が非常に重要である。
●膝蓋骨脱臼は、大腿骨滑車形成不全(FTD)の一般的合併症で、膝の内側の安定装置を損傷させる事が多い。膝
のこれらの構造を描写するには、核磁気共鳴画像と超音波検査が有効である。FTDは、膝蓋骨脱臼との関連性が
強いので、時機を得た管理が重要である。 (以下省略)