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PAACニュース170号:斜角筋三角と肋鎖スペースの記述解剖学と胸郭出口症候群との関係:60体の屍体に関する研究

2018/11/13

                            Kelly A.Dahisrtom,BS、Anthony B.Olinger,PhD 著

                                            訳注:栗原輝久

要約
目的:胸郭出口症候群は、古くから3つの特殊な解剖学的部位(斜角筋三角、肋鎖スペース、烏口小胸筋トンネル:coracopectoral tunnel)の中の1つ、あるいはそれ以上の部位の収縮の結果であるとされている。核磁気共鳴画像とCTスキャン画像の研究によって、収縮する可能性のある3つの部位については、肋鎖スペースが最も圧迫が生じ易い部位であるという事が提示された。今回のヒトの屍体での研究では、斜角筋三角とそれと関連する肋鎖スペースに関する記述解剖学を展開する事を目標としている。
方法:防腐処理したヒトの屍体の120ヶ所について、斜角筋の角度、斜角筋三角基底部、肋鎖スペースを測定した。ノギスと分度器を使って、直線距離と角度をそれぞれ測定した。平均値、範囲、表フン偏差を計算する事で、そのデータを分析した。
結果:斜角筋三角基底部の範囲は、0 ~ 21.00 mmで、平均は 10.7 mmだった。斜角筋角については、その範囲は、4 ~ 22° で、平均は11.3° だった。肋鎖スペースjの測定値は、6 ~ 30.9mm で、平均は13.5mm だった。
結論:左右の斜角筋三角や肋鎖スペースについては、有意な差異は観察されなかった。更に、これら2つの部位に関しては、性差も見られなかった。(J Manipulative Physiol Ther 2012;36:396-401)
検索キーワード:胸郭出口症候群:解剖学

  
  図1.斜角筋三角の描写、斜角筋角と斜角筋三角    図2.斜角筋三角の内容。斜角筋三角を通って前斜角筋と
  基底部の他に、斜角筋も図示されているが、両    中斜角筋との間を走行している斜角筋三角の要素である
  方とも今回の研究で測定した。A:図解,B:写真       腕神経叢や鎖骨下動脈を、此処では見る事ができる。
  Middle scalene:中斜角筋                                   Middle Scalene:中斜角筋
  Interscapular Angle:斜角筋角                            Interscalene Angle:斜角筋角
  Anterior Scalene:前斜角筋                                Anterior Scalene:前斜角筋
  Interscalene Base:斜角筋三角基底部                 Brachial Plexus:腕神経叢   
(カラーヴァージョンはオンラインで入手可)               Subclavian A:鎖骨下動脈
                            Interscalene Base:斜角筋三角基底部

    
  図3.肋鎖スペースの描写。ここでは、第1肋骨    図4.測定方法に関する描写。斜角筋角の測定のため
  の上方、そして鎖骨の下方を走行する肋鎖スペ    のダイヤル式分度器の配置と、斜角筋三角基底部の
  -スの中の神経血管要素を見る事ができる。矢印   幅の測定のためのノギスの配置。
  は、測定が行われた部位を示している。      (カラーヴァージョンはオンラインで入手可)。
  (カラーヴァージョンはオンラインで入手可)。
  
  
  図5.肋鎖スペースの測定のためのノギスの配置。
  (カラーヴァージョンはオンラインで入手可)。
  Caliper:ノギス
  Clavicle:鎖骨
  Costoclavicular Space:肋鎖スペース
  First Rib:第1肋骨

      臨床的応用
  ●前斜角筋と中斜角筋の付着部の距離や角度に関する今回の実測的な屍体研究によって、斜角筋三角の大きさにつ
   いての非常に大きな多様性が明らかになった。
  ●胸郭出口症候群の診断や治療に関しては、斜角筋三角や肋鎖スペースについて理解する事に臨床上の意義があ
   る。

  (以下省略)


 

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