PAACニュース187号:後頭環椎関節の頭直筋の損傷閾値

2018/12/01

                                   Richard C.Hallgren,PhDEE,PhDBME 著
 
                                                訳:栗原輝久

要約
目的:今回の研究の目的は、4つの頭直筋(rectus capitis:RC)からの筋硬直データをを収集して、これらの筋群が後頭環椎関節の安定性に果たしている役割に関する理解を深めるというものである。これらの筋群の受動荷重の変位特性については、今まで報告された事が無かった。
方法:頭直筋群を3体の防腐処理をしていない頭部と頸部の標本から取り出した。サーボ機構制御の水圧検査装置を使って、受動的長軸力(硬直)データを収集した。ボンフェローニ補正による多変量分散分析を行って、各々の筋の弾性域内の受動的硬直と降伏点での荷重と筋緊張の間の違いに関する有意性を評価した。
結果:外側頭直筋(rectus capitis lateralis:RCL)は、他の3対の筋群と比べると、有意に高いレベルの荷重と筋緊張で損傷した。外側頭直筋と前頭直筋の受動的硬直度は、他の2対の筋よりも有意に大きかった。
結論:外側頭直筋(RCL)は、その高い受動的硬直度の他に、その解剖学的位置によって、通常の日常活動中の後頭環椎関節の調和の維持が促進されているのだろう。追突による自動車事故の際に小後頭直筋の機能喪失が生じるレベルでは、それらの筋が伸張性損傷の危険に曝される事がある。上部頸椎に力を加える診断的で治療的な手順は、頭直筋の過剰伸長を避けるために、患者の年齢、性別、これまでの外傷歴を考慮して調整するべきである。(J Manipulative Physiol Ther 2017;40:71-76)
検索キーワード:後頭環椎;頸椎;力

                     (中略)

           
  図1.小後頭直筋(RCPm)、大後頭直筋(RCPM)、前頭直筋(RCA)、外側頭直筋(RCL)の力ベクトル
  (Force Vector)の矢状面。

     
   図2.左右の小後頭直筋(RCPm)とそれらの骨へ   図3.標本を取り付けた張力検査装置。
   の付着点。

          
       図4.小後頭直筋(RCPm)の典型的な荷重変位曲線  図5.歪みの作用として描画された頭直筋(RC)の
                             降伏点での荷重データ。


  実際の適用
  ●今回の研究は、これまで発表された事の無かった頭直筋群からの力変位に関するデータを提示している。これら
   のデータは、上部頸椎のコンピューター・モデルを説明するのに役立つだろうし、このコンピューター・モデル
   は、鞭打ちタイプの歪曲の結果として生じる筋緊張のレベルを評価するのに役立つだろう。
  ●外側頭直筋からのデータによって、この筋が他の3対の筋群よりも硬直しているという事が実証されているが、
   これは、外側頭直筋の機能的役割が他の筋とは異なっているという事を示唆している。我々は、外側頭直筋が後
   頭環椎関節の調和を強化していると提言するものである。
  ●筋標本は、高齢女性の屍体から入手した。過伸長の結果として筋線維が断裂し始める(荷重の)程度から、高齢
   者のような特別な患者グループに順応するための標準的診断や治療手順の際に用いる力のレベルを修正する事
   を、臨床家が知る事になるだろう。

  (以下省略)




 

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