小児のカイロプラクティックより(分娩の準備)

2019/03/10

分娩の準備
 妊娠後期、あるいは初期陣痛のある時点では、胎児は骨盤の中に向けて、下方へと動き始める。この経過は"下降"と呼ばれている。胎児が"浮遊している"と形容される時には、最下部あるいは"先進部"は恥骨結合より上方にある。初妊婦の場合、典型的に陣痛が到来する前に幾分の下降が徐々に、あるいは突然に生じる。経妊婦の場合、胎児がまだ浮遊している、あるいは骨盤の高い位置にあるのに陣痛が始まるのが一般的である。初妊婦と経妊婦の両方における下降の大部分は陣痛中に起きる。
 胎児が下降する時には、その経過は下降度(訳注:骨盤内の胎児の産道内下降の程度)によって計測される、これは左右の坐骨棘の間に引いた想像上の線と先進部の位置との関係によるものである。坐骨棘の高さでの頭位における(産瘤ではない)骨頭蓋の位置、あるいは骨盤位における臀部の位置は、その下降度が0である事を示唆している。胎児の頭頂が下降度0であるのならば、これは頭部が骨盤中央まで下降している状態を描写している。頭部が浮遊している時には、それは+4 先進部下降度である。同様に下降は、胎児が最高位(-4先進部下降度)から最低位(+4先進部下降度)へと移動して、それから生まれるという事を意味している。多くの女性はー1あるいは0下降度で陣痛が始まる、これはある程度の下降が既に行われた事を意味している。
 妊娠後期に起きる下降を描写するための別の言葉には"ライトニング(訳注:胎児の頭部が骨盤内にはいること。出産2~3週間前に感じる事ができる。ドロッピングに同じ)"や"ドロッピング"がある。これは母親の胸部と上腹部の圧迫の主観的な解消と腹部の外形の著明な変化の事を指す。
 "進入機序"は、最終的には膣の検査でのみ決定されるもので、噛み込みながら先進している部位、あるいは0下降度、そして骨盤内で固定されている事を指している。

ライトニング(Lightening)と進入機序(Engagement)
 ライトニングは、妊娠後期の週に先進部が下降する時に、患者が感じる主観的な感覚である。ライトニングと進入機序は同時に起きるが、ライトニングは進入機序とは同義ではない。ライトニングは、子宮と腹筋の緊張によって引き起こされ、子宮下部と骨盤に対する先進部の適合の一部である。症状には軽い呼吸困難、上腹部の圧迫の減少、胎児が下がったような感覚、骨盤での圧迫の増加、腰痛、頻尿、便秘、痔疾の初めての出現、あるいは既存の痔疾の悪化、静脈瘤、両足と両下肢の浮腫、方向困難の進行がある。
 当然の事として、先進部の横径が最も広がった状態で入口部を通過する時に、進入機序が起きる。頭位では、この横径は両側の頭頂骨の突起の間での両側頭頂結節間距離である。骨盤位では、これは(大)転子間径(大転子間距離)である。
 殆どの女性において、一度頭部の進入機序が生じると、(産瘤ではない)骨性の先進部は、坐骨棘あるいはその近くに存在している。この関係は一定ではなく、深い骨盤を持った女性の場合、たとえ進入機序が生じた時でさえ、先進部は坐骨棘の1cmほど上方にあるかもしれない。
 進入機序の有無は、腹部、膣、直腸の検査で決定される。カイロプラクターが腹部検査で進入機序を決定するのは容易である。子宮内制約(in-utero constraint)が生じ、生体力学的な取り扱いが必要とされるのならば、これは特に必要である。初妊婦の場合、進入機序は通常であれば、分娩の2~3週間前に生じる。経産婦の場合、進入機序は陣痛の到来の前、あるいは後のいつでも生じる。進入機序は、骨盤入口が適正である事を我々に教えてくれる。進入機序は、骨盤中央部や出口に関しては、何の情報も与えてくれない。初妊婦における進入機序不全は、児頭骨盤不適合、異常な胎位、あるいは産道を閉鎖するような何らかの状態を除外するための慎重な検査の必要性を示唆しているが、これは、必ずしも警戒する理由にはならない。正常な場合の進入機序の発生は、子宮と腹筋の影響を受ける。


 

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